パリの薬草店で働く薬剤師のブログ

エルボリストリ薬草帖

Harpagophyton 抗炎症作用のある植物

JUGEMテーマ:フィトテラピー

こんにちは。 今回はエルボリストリで相談内容で多いものの一つ、関節などの「痛み」について。 痛みを和らげるための植物療法としてよく用いられているのがHarpagophyton(アーパゴフィトン)です。 学名Harpagophytum procumbensまたはHarpagophytum zeyheriというゴマ科の植物で、デビルズクロウとも呼ばれています。 ナミビアやボツワナで栽培されており、アフリカやヨーロッパでは伝統的に使用されている植物です。 近年使用量が増え、減少傾向にあるため輸出量をコントロールして保護されています。 化学物質構成としては 糖類、トリテルペン類、ジテルペン類、フェノール酸類 イリドイド類(0.5-3%):Harpagoside(ハーパゴシド)0.1-2%, Harpagide(ハーパジド), procumbide(プロカムビド) が含まれています。 使用部位は根(側根)で、薬局方基準では最低1.2%のハーパゴシドを含むものとされています。  

Harpagophyton(根) Harpagophytonは以下のような薬学的作用が知られています。 <抗炎症作用>

・システイニルロイコトリエンとトロンボキサンB2の産生を阻害(in vitro) ・カラゲニン浮腫の抑制(ラット・マウス) ・ホルマリン刺激の関節炎の抑制(ラット) ハーパゴシドを単離して投与した場合よりも、水溶液(ハーブティー)全体で投与する方が効果が高いことがわかっています。 ハーパゴシドのみが薬効に持つのではなく、他の成分も関与しているということです。 <抗不整脈作用>(動物モデル) ・ラットで血圧降下作用、陽性変力作用、陰性変時作用

<消化管鎮痙作用> ・苦味質を含むことによる(イリドイド類) 臨床試験でもプラセボとの有意差や薬剤と同等の効果が認められる結果が出ています。 ハーブティーとして単体で摂ると強い苦味があるので、他のハーブとブレンドして飲んだり 粉末やカプセルのサプリメント、水–アルコール抽出液(チンキ)で摂ることもできます。

 

EMEA(European Medicines Agency)欧州医薬品庁モノグラフィーより  適応 伝統的療法として軽度の関節痛や消化器障害(食欲不振、鼓腸、消化不良)に (フランス:伝統的療法として軽度の関節痛の治療に) 用量 :成人用(18歳以上) ・アンフュージョン:4.5g/500mL 分3で服用 ・粉末:1日1.5gを分3で服用 エキス剤は省略 1回の治療は最小2週間、最大4週間まで。 その後は1週間ほど休薬し、再開してもよい。 注意:胃・十二指腸潰瘍、胆石、心血管疾患の既往歴 禁忌:胃・十二指腸潰瘍、妊娠中、授乳中、胆管閉塞 医薬品との相互作用は知られていない 併用注意:NSAIDsの併用は副作用増強の可能性があるため注意。 (用量を減らしたり、交互に服用するなど) エルボリストリでは軟骨の変性を伴うような関節症にはネトルやスギナなどのシリカを含むものを組み合わせたりグルコサミン、コンドロイチンやヒアルロン酸のサプリメントを組み合わせたりします。 また通常生体内のpHは弱アルカリ性に保たれていますが、ストレスや食生活の影響で酸性に傾くと炎症を起こしやすくなると言われています。乳製品や精製された小麦などは控えるように合わせてお話ししています。 "牛乳のチーズは酸性化するがヤギや羊のチーズは摂っても大丈夫" だそうです。 ちなみに、日本は「痛み」となると湿布薬が処方されますね。 フランスでは、ゲルやローションなどの鎮痛外用剤は使用されていますが湿布薬はあまり使用されていません。 薬以外で痛みを和らげるために外用で使用されるのは、クレイの湿布や、精油の塗布です。 精油はウィンターグリーン、ユーカリレモン、ペッパー、カタフレイなどを組み合わせて使用することが多いです。 以上、今回はHarpagophytumのお話でした。 最後までお読みいただきありがとうございます。 KAORI